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December 07, 2004

チップ(Tip)

チップは、日本にない欧米の習慣です。心付けとも訳されるこのシステムは、なかなか合理的な側面があります。

アメリカの場合、チップが付く職業と、そうでないものとでは、日本の労働基準法にあたる法律で示される最低賃金が異なります。雇用主が、チップが入ること前提にした給与体系を認めているのです。実際に食事の金額でチップが決まることもあり、高級なレストランなどでは、給仕も段々と男性比率が上がってきますし(アメリカでも女性の就業率はまだ男性と同じでないと思います。少なくとも実感としてはそう感じます)、給与よりチップの方が多いケースもよくあります。

チップの基本的な意味は、なんらかのサービスを提供してくれた人にお礼として渡すものです。社会がひとつの階級ヒエラレルキーで構成されていた時代、使用者層と使用人層は、今よりも隔絶していたのだろうと思います。その使用者層が、日常的に使用人層に取った行動のひとつがチップだったように感じます。このことは、お金を払うのだから、サービスを提供しろ。(つまり、雇用関係)ではなく、お金をもらいたい側が自発的にサービスを施して結果として、そのサービスに見合うものとして対価が支払われる仕組みであることを物語っています。

まともなレストランに行くと、このことが実感できます。チップのために働いているわけではありませんが、お客さんが如何に満足するか?を自分の問題としてとらえた行動をしています。ところが、レベルが下がると、マニュアルで動くので(そうしないと質の確保ができないのだろうと思われます。)、ある程度の顧客満足は与えられても、一定水準以上は期待できません。そんな状況でも、まともな感覚の持ち主で有れば、取りあえずサービスをすることの理由を認識していますから、接客で最低限必要なこと(笑顔や言葉遣い、多少の気を回すことなど)がチップのお陰で円滑にこなすことができます。

ただ、食事代のX%という考え方が頭にあり、余分な注文をさせようとする行動や、デザートや追加のワインを断ったりしたときの露骨な表情は、そのディナーを台無しにすることまでは、理解されないことがままあります。このことが、結局そのレストランの質を決めてしまうのですが、経営側としても鶏と卵の関係でなかなかそのモラリティーの高い従業員を確保することは難しいのかも知れません。特にアメリカにおいて、このレベルでは日本の人より現実的行動をとります。そのことは、ストレートな感情表現と言われるものと合致しているのかも知れませんが、サービスプロバイダーには向いていません。


日本ではサービスという無形の概念には、なかなかその価値を認めてもらいにくいものがあります。サービスに限らずソフトウエア一般が同様の扱いだろうと思います。逆にものとして具象化された形のあるものには、欧米以上の価値が認められやすいです。よく見ると日本だけでなくアジア全体でその傾向があります。

日本が製造立国であるというのは、この先継続が難しいものです。実際の製造を国内で行う経済的意味は、資本主義経済を取る限り、限りなく0に近づきます。その中で技術立国として社会がシフトしようとしていると思いますが、ソフトウエアに関する正当な価値感をもつ社会の形成が必要とされるように思います。

このことは、高額の知的所有権を意味するものではありません。むしろ、報道に載るものは逆の面を感じます。アメリカの企業や個人から、思いつき特許で法外な使用料を吹っかけられた日本企業の話題が90年代に続出しましたが、昨今の元社員の特許の問題はそのことを思い出させます。

契約社会(多分、資本主義社会構造の基本形態)では、いくら、会社で自分が発案、発明、開発したとしても、不当な(と後で自分が思う)労働協約にサインした時点で負けなのです。もし、訴えたいので有れば、サインする前に行動すべきです。(*1)結果が出てから自分取り分に文句を言うのは、経営サイドから見ればリスクテイクをせずにリターンを期待することであり、それが論外と受け取られるのは当然でしょう。

私が見る限られた範囲の記事情報の中では、裁判所はこのリスクに関して全く言及していません。投資は、リスクに対してリターンがあります。結果が先にあるのでは有りません。これが資本主義の原則です。この認識の欠如が、たぶん、社会にまだソフトウエアに関する正当な評価をする方法や評価のコンセンサスが形成されていないものを表すもっとも端的な例の一つだと思います。


*1:大抵の企業の協約には、仕事上での成果は会社に帰属する代わりに給与が支払われることになっているはずです。その割合は書かれていませんが、大元の給与そのものですら会社が決められる仕組みです。知的財産だが協議事項になるはずが有りません。出来高払いを期待するなら、プロスポーツ選手やタレント、作家などと同様に出来高払いの契約を先にするべきと思いますが、如何でしょうか。

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tip: チップ
hierarchy: ヒエラルキー(階層構造)
morality: 道徳や品行(モラリティー)
tangible: 形のあるもの、有形の
intangible: 形のないもの、無形の
risk: リスク
investment: 投資
return: 帰ってくるもの、(投資に対する)成果

Posted by skydaddy at December 7, 2004 11:59 PM
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